無駄なことをしている感覚

チームで連携して仕事を進めていく際に、「これは明らかに無駄ではないか?」と感じる場面に出くわすことがあります。
特に、自分のほうが実務経験が長く、すでに合理的なやり方が見えている場合には、その非効率が際立って見えるものです。
しかしながら、そうした「わかりきった無駄」もチームワークが求められる場面においては、避けて通れないステップだったりします。
相手のほうが立場や力関係が上

たとえば、相手が中途入社で入ってきた上司や、形式上リーダーとして立場が上であっても、実務経験や業務の理解度は自分のほうが上であるケースもあります。
そうした場面では、「なぜ自分の提案が通らないのか」と感じてしまうかもしれません。
しかし、社内の役割や上下関係の中で、たとえ納得できない部分があったとしても、相手の意向に従って進める必要がある場面は少なくありません。
独断で動いてしまえば、「扱いにくい存在」として見られてしまう恐れすらあるのです。
一度目は目をつぶってやってみる

とはいえ、無駄に感じる業務に対しては何とも言えない心持ちになってくるものです。しかし、ただ反発するのではなく、まずは一度そのやり方で取り組んでみるという姿勢も重要です。
実際にやってみて、たとえば残業が増える、工程が長引くといった「結果」が出たとき、ようやく周囲もその非効率に気づきやすくなります。ここであらためて、自分の考えていた案を提案するのです。
上長の動きを待つという手法

その際に無難なのが、上司の「指摘」や「気づき」を待つという手法です。
「最初からこうすべきだと思っていました」と主張するのではなく、「このやり方で進めた結果、このような事態になりました。実はもう一つ案があったのですが……」と、あくまで現状を踏まえて自然に提案する。
ここでポイントになるのは、第三者を通して、相手に話をしてもらうことです。自分の意見をそのままぶつけるよりも、組織内の力関係を踏まえた伝え方の方が、提案が通りやすくなります。
住居トラブルでも直接隣人や上の階の人に話をしに行かずに管理人に話を通すことが鉄則なように、角が立ちそうな内容は第三者に間に入ってもらうことが望ましいです。
ストレスに感じたら、それもサイン

しかしながら、どれだけスマートに振る舞おうとも、非効率なやり方が長く続き、自分の時間や精神力が削られていくようであれば、それは明確な現状見直しサインです。
その場合は、自分がより主導権を持てる活動が可能な環境を検討することもひとつの選択肢です。
副業や小規模なプロジェクトなど、自分の判断で進められる場を並行して持つことで、精神的なバランスを保つことも可能になります。
わかっていても、目をつぶる価値

無駄だとわかっていても、あえて目をつぶる。これはチームに貢献する人材として求められるパフォーマンスです。さながら俳優のごとし。
- 誰の目にも「非効率だった」と映る機を待つ
- そのうえで「別案がある」と示す準備をしておく
- 組織内の空気を読みつつ、仕事の考え方は発信しておく
これらを意識して一歩引いておくことで、逆に信頼や影響力を高められる可能性があります。
チームで動くには慌てないこと

無駄と感じることも、実は変化を生み出すための大切なステップであることがあります。自分の目には非効率に映り、結末まで見えていたとしても、あえてそのやり方を受け入れておきます。
そして、時間が経ち、周囲にも状況が見えてきた段階で、自分の案を提示する。そのように、ひと呼吸置いた対応が、最終的には流れを好転させることにつながるかもしれません。
なかなかに、まどろっこしいところはありますが、チームで仕事を進めていく上では、正しさや効率だけでは動かせない局面がいくつもあります。
だからこそ、自分の意見を押し通すのではなく、まずは言われるがまま実行し(こっそり自分がやりしやすい形に寄せれそうなら寄せる)、その結果をもとにあらためて提案するというプロセスを踏むことが重要です。
先を見通していても、すぐに行動に移さず、あえて一度目をつぶり、感情的にならず、状況を俯瞰し、周囲の流れを待つ。そして、然るべきタイミングで自らの判断を提示する。
このような柔軟さと冷静さの積み重ねが、結果的に組織の中での信頼や影響力を高めていくことにつながっていきます。
不毛なステップといえど、「正しさ」をすぐに証明しようとせず、あえて一歩引いて構える。チームで動くとは、そうした慌てない強さを持つことなのだと思います。