ビジネスやプライベートでの会話
ビジネスでもプライベートでも、日々の生活の中で多くの人とコミュニケーションをとる機会があります。その中には、心から信頼できる相手や、遠慮なく本音で話せる相手もいれば、逆に適度な距離感を保ちながら割り切った会話をする必要がある相手もいるでしょう。
本音で話せる相手との会話は、共感や信頼関係を深める良い機会となり、互いの理解をより深めることができます。一方で、割り切った会話をする場合は、相手との関係性や状況に応じた適切なコミュニケーションが求められます。
それぞれ様々な生い立ちがあるでしょうし、経験してきた事柄も異なります。
様々な相手に対して、この人に話せる内容はここまでかな、時間を割くことができる範囲はここまでかな、というコミュニケーションのラインを見極める一つの指標が、会話の時に感じる「違和感」です。
今回は、会話の際に生じる「違和感」について考えてみたいと思います。
会話には本音と建前がある
まず、会話には「本音」と「建前」という2つの側面が存在します。
本音ベースの会話は、相手との信頼関係を築き、深い理解を得るための重要な手段となります。一方で、相手を気遣ったり場の空気を読む必要がある場合、建前ベースの会話となり、自分の本心を抑えつつ、社会的な礼儀や調和を保つ手段となります。
主に、夫婦や友人、兄弟などが本音ベース、親戚や知人、仕事関係の人などが建前ベースでの会話になってくるかと思います。
もちろん、関係性によってはこの限りではありませんが、信頼度が高いほど本音ベースでの会話になってくるでしょう。ただ、どれだけ近しい人であっても優しい嘘などが必要だったりするように、相手に望まれない場合はある程度の建前が必要な面があります。
例えば、家族が作ってくれた食事に対して美味しくなかったとしても、基本的には「マズッ。」というようなことを言ってしまってはいけないことはわかるでしょう。ただ、実際にはそれに近いことをしてしまいがちなのが近い関係性のあるあるでしょうか。
本音と建前に関しては、すべてが本音、すべてが建前、というようにスッパリ切り替えるものではなく、グラデーションのように本音と建前を使い分けながら良好な関係性を維持するための手法に過ぎません。
要はバランスなのですが、このバランス感覚を掴むために会話の際の「違和感」に注意を払うことが推奨したい対応です。
会話で違和感を感じたら距離をとる
話している中で感じる「違和感」は、自分の価値観に対して相容れない何かがあったりするときなどに発生するものかと思われます。それは、あなたが向き合う相手の一部かもしれませんし、大部分かもしれません。
そして、「違和感」が生まれやすいのは、ちょっとした発言や言葉の選び方、会話の運び方です。そこに、個々人の重要視する価値観や本音が滲み出る部分があるからです。
結論として、「違和感」を感じたポイントが、自分が大事にしている価値観や目的達成に影響する部分であるならば、「違和感」を感じてしまった相手とは距離を置く必要があります。
当たり前といえば当たり前です。普通のコミュニケーションにおいて、子供のころから「何か違う」と感じた相手とは自然と話さなくなるものでしょう。その延長線上の対応になります。
「違和感」を感じた人とは距離をとる。人と距離が取れない場合は「違和感」を感じたテーマでは深入りしない。会話の細かい内容よりも、距離感に意識を集中して、適切な距離感を保つことがかなり重要です。
適切な距離感は時間を守る
なぜ、「違和感」を感じたら距離をとる必要があるのでしょうか。それは、自分の大切な資産を守るためです。ここでいう資産とは、お金、時間、信用、立場、あらゆる自分の価値を高めるもののことを指します。
人間関係において適切な距離感を間違えると、大切な資産が失われていく結果になります。
資産が失われると言ってしまうと、少し仰々しいところがありますが、価値観の違いから言い争いが起こってイライラする時間が増えて仕事や日常に影響が出たりすると、楽しく過ごせるはずだった時間が減ってしまいますよね。
そういったことも含めて、適切な距離感を保つことが大切なものを守るための方法となるのです。
適切な距離を保てなかった
私自身、フリーランス時代と会社員時代にそれぞれ距離感を失敗してしまい、不満やもやもやに囚われ、時間を無駄にしてしまったことがありました。
「違和感」を感じていることには気づいていたものの、関わる以上は理想とする関係性にしたいと思い、その相手に対して適切な距離より近づこうとしてしまいました。
本音で話せることは理想ですし、建前だけの会話だと心に刺さることはないでしょう。やはり、どこかに本音が入っているから人の心にストレートに刺さる部分があるかと思います。
しかし実際は、私の要望や提案に対して明確な誠実性を感じる回答や質問が欲しかったのですが、そういった回答は返ってこず、自分の持っていきたい方向性に誘導されるような形でした。
私はできるだけ本音ベースで会話したい、という意向を持っていたので会話や提案を続けてしまいましたが、今考えれば甘い考えでした。会話をしているようで、同じようなことを一方的に言い続けられるだけで、話を聞いてもらえることはなかったです。
「違和感」ある会話になる相手に対しては
会話の中でどうしても「違和感」が残ってしまう相手に対して、「違和感」を解消することは難しく、何か別の行動で対応するしかありません。
基本的に、会話の中で「違和感」を感じる人に対しては、その「違和感」があるポイントが原因でコミュニケーションがすれ違い、心地よいコミュニケーションが取れなくなっていく可能性があります。
取引先なら取引を減らすような形、会社の上司と部下なら早い段階で割り切る形が必要でしょう。
この違和感を解消しようと本音ベースで関係を続けていこうとしたとき、そもそも本音が一致しないので、必ず大きな不満となっていきます。そのような中、関係を続ける場合は力関係に従うような形となります。
ですので、可能なら早い段階で、建前ベースのコミュニケーションに切り替えるなどして心の距離を遠ざける必要があります。
これは、殺伐とした雰囲気のように思えますが、人間関係の立ち回りがスマートな人は、上手に力関係の中で許される最大限の交渉、つまり本音と建前のバランス取りを行って、見え方としては円滑な人間関係となっていることでしょう。
実際距離を取るのが難しい
しかしながら、違和感を感じた時点で距離を保てばよいとはいうものの、実際には難しいケースも多いかと思われます。
「違和感」を感じる人に対しても、要望を聞いてもらえるようなやりとりもあったり、仕事に対する姿勢に尊敬できる面があったり、コミュニケーションが円滑なときがあったりすることがつい期待の感情を呼び起こし判断を難しくさせます。
また、「生活ができなくなってしまうかもしれない。」「今うまくやれないということは、他でもうまくやれないかもしれない。」「ひょっとしたら誤解かもしれない。」「実は自分が至らないだけかもしれない。」といったことを考えて変に頑張ってしまうかもしれません。
しかし、よく考えてください。事実を冷静にとらえてください。具体的に、その人は自分のためにどういった行動をしてくれましたか?それは、相手の善意悪意はどうであれ、自分の要望に沿ったものでしたか?
その人自身の意思で、自分の要望に沿った行動をしてくれているなら、まだ本音が伝わる可能性があるでしょう。しかし、そうでないなら、本音が伝わることはないでしょうから、距離を置く判断としてよいと思います。
仮に伝わるとしても、力関係が変わったり、何か大きなラッキーがあったりするなどの大きな変化があったときで、今の延長線上にはないでしょう。ですので、いったん距離をとるような方向性の立ち回りに切り替えることが得策です。
誤解の可能性もあるが
会話の中で「違和感」を感じた人とは距離を取ることが得策なのですが、懸念材料のひとつ、相手のことを誤解している可能性も考慮しておく必要があるとは思います。
その可能性もできるだけ少なくするために、3回は同じような話をしてみるとよいでしょう。それでも、同じような反応になる、といった場合は、「自分が変わる」か「関わらないようにする」かしかありません。
話し方を変えようと、説得の資料を整えようと、「違和感」を感じるポイントにはおそらく効果がないかと思われます。そこは、努力や頑張りで影響する部分とは別軸の人間関係における相性のようなものです。
自分が変わる場合は、ちょっとした行動を相手が望む形に合わせるというものから、無償で働く、貢ぐ、などあまりよろしくないようなことまで我慢できる範囲で変わることになります。
たとえ誤解だったとしても、3回言っても伝わらないときはそのままきっと伝わることはないので、別のことに頭や体を使うようにしたほうが建設的です。本当に誤解だったら、後で心から謝ると決めればよいだけです。
違和感を感じたらそのポイントを明確にしておく
さて、ここまで会話の中の「違和感」というものについて書いてきましたが、この「違和感」についても少し掘り下げておければと思います。
会話の中で、何かモヤッとしたり、おやっ、と思ったりしたタイミング。このとき、違和感を感じた事柄はしっかりと、明確にテキスト化できるくらいに自身で理解しておく必要があります。
というのも、自分が違和感を感じるときというのは、働くうえでも生活をするうえでも、大事にしたいと思っている価値観や欲求を満たすことができないという可能性を曖昧に捉えている状態であり、
そこで、その状態を明確にするということは、自分の価値観を捉えながら、社会人生活や日常生活において今後どこに力を配分していけばよいかを考える指標の一つになるからです。
言語化するスキルが必要になる
そうはいってもなかなかハッキリとは難しいかもしれません。相手のこともわからないし、自分のこともよくわかっていないものです。転職活動などで自己分析をした機会があっても、時が経てばその場その場ではよくわからなくなったりするものです。
「一言でいうと何なのか?」という質問を繰り返して、端的な答えを出しておけると、迷いが減り、他者に振り回されるような立ち回りを避けることができます。
自責と他責のバランスが丁度よい立ち回りというのでしょうか。自分のルールを明確にすることで、必要以上に他責になったり自責になったりせずに済むのです。
一言で価値観を明確にしておき、自分が望む価値観を満たせるかどうかをチェックリストのように照らし合わせ、だめなときはすぐ切り替えるようにします。
そのために、フワッとした違和感と自分の思いについては日頃から言語化して置く必要があり、言語化スキルが足らないなら、本を読んだり文書を書いたり、話しが分かりやすい人に聞くなどしてトレーニングしておく必要はあるでしょう。
違和感を大事にする
不思議なもので、後々人間関係を振り返ってみたときに一つ言えることは自分が感じる「違和感」はおおむね正解だということです。普段から自分のことを理解していれば理解しているほど、この「違和感」が正確になってくるかと思います。
その時に、この人はここまでしか話せない人だな、ととらえて、自分が伝えたい価値観に基づく会話は直ちにやめることができると、無駄なコミュニケーションに労力を割く必要がなくてよいです。
おそらく、何度か説明を試みたところで、どうにも伝わっていないな?と感じるはずです。そこで、説得しようとしたりすることは時間の無駄です。そもそも、相手方に聞く気があれば今のモヤモヤした気分にはなっていません。
力関係があるなら、相手が言っていることに従うしか方法はないので、この人には上に立たれてもいい、と思える人でないとストレスが大きいでしょう。そして、それが嫌なら、何とかして相手と離れるしかありません。シンプルに。
「関わらないようにする。」のが現実的に難しい場合は、「割り切って接する。」ということが無難な解決策であり、多くの人が自然と取っている行動になってくると思います。「割り切る」ことが可能なタイミングであれば、そうするのもよいでしょう。
理想を目指すなら
この気持ち悪い「違和感」をなくそうと思うと、本音ベースで一致する必要があるので、相手の価値観を変えたい、という話になってくきます。
基本的に相手の価値観を変えることは難しく、相手の価値観を少なからず変えようとする場合は、行動で示すほかありません。言葉で反抗したり押し付けたりするような形になってはいけません。
おそらく自身が違和感を感じる点に関しては、思いで相手は動いてくれません。「売上が増える減る」「人手が増える減る」「評判が上がる下がる」「可能性が増える減る」という事象のために相手は動くのです。
過去に思いに対して動いてくれたケースがあったとして、それはあくまで事象と合致していたからです。「この人の思い」を無視することは、「人手が減って」、「売上も減る」「可能性も減る」という事象の流れがあったからです。
そういった懸念する事象の発生が起こると思えない、起こったとしても大したことがない、と相手方が判断しているとき、思いだけが説得材料となっているときは、言葉には何の影響力もなく、むしろうるさいのでマイナスです。
相手にとってもマイナスに捉えられるうえに、自分の貴重な時間を割くことになります。これは、「弱い犬ほどよく吠える」という状態になっているので、「違和感」を感じる相手に対しての解決としては強い犬になるしかありません。
どちらにせよ、強くなる必要があることに変わりはありません。物事を受け流すためには「不動の精神」を会得する必要がありますし、関りを断つためには「スキル」や「経済力」を備える必要があります。
失敗して感覚をつかむしかないところがある
これまで、「違和感」を感じた相手に対する対処について考えてきましたが、実際のところ、距離感を保つことができないタイミングのときは失敗の可能性は抱えたまま進むしかない運の要素もやはりあるからです。
自分の価値観を変えた場合は、この「違和感」を感じた相手ともうまくやれる可能性があります。自分が間違っている点があったり、相手方に深い思いがある場合は、正解になるかもしれません。
これまで培ってきた安全な道のりを崩す作業にるだけだったり、単なる相手のわがままのようなものに振り回されるだけの場合は、間違いになるかもしれません。
「違和感」を減らす毎日のために
人間関係において、「違和感」の原因となる自分の価値観や考えが後々間違っていたなと反省できるときもあるかもしれません。しかし、「違和感」を感じている場合、おそらく相手も間違っている部分はあるでしょう。
しかし、関係性の本質は力関係。力関係をベースに間違っている度合いを加味して、正当性を持つ側は決まってきます。
納得いかない状況の時は、「分が悪い。」ととらえておきましょう。こればかりは仕方ありません。「分が良い。」ようにするには、力を蓄える行動を積み重ねるしかありません。
具体的に必要な行動は、人それぞれ違うかもしれません。キャリアにつながるスキルの獲得や、副業、毎日を楽しむこと、効率よい仕事のやり方、自分の演じ方のマインドセットや手法、様々です。
理想とされる本心で行動する場所を求めつつも、基本的には割り切って行動する。割り切って行動するために、着々と日々必要な材料を集め積み重ねていく。これが1日1日を切り取った時に必要なアクションではないでしょうか。
それでは、また。