
衝動の波に流される前に
朝起きて、まずスマホを手に取る。通知があればそちらを確認し、なんとなくSNSを眺める。気がつけば、もうこんな時間……。多くの人が経験したことのある光景ではないでしょうか。 何かしらの衝動に突き動かされて、一日のスタートが始まってしまう。衝動は時に「今日はあれをやろう!」という積極的なものもあれば、「面倒だから後で…」という消極的なものもあります。
それでも、結果として自分が「よい」と思えるなら、それは良い一日です。逆に、よくなかったと感じるなら、その一日は「衝動に流された」一日だったのかもしれません。
「何をするか」ではなく、「自分がコントロールしたかどうか」「目に見えるプラスがあったか」が、一日の評価を左右するのです。

一番やりたいことは何か?
仮に、今日一日で「ひとつだけ」しか物事ができないとしたら何を選ぶでしょう。この問いは、単純でありながら非常に有効です。なぜなら、選択に迷いがないときほど、行動はスムーズになるからです。
実際には、いくつもやるべきことがあります。家事、仕事、連絡、雑務。しかし、その中でも「一番やりたいこと」を明確にできたなら、それを最初に手をつけてしまうのが最善です。
それが終われば、他のことが後回しになっても心が軽いはずです。逆にそれを後回しにしてしまうと、終日ずっと頭の片隅に残り続けて、気分が重くなるものです。

時間がないときこそ、先に進める
「やりたいこと」があるのに、時間がない。そう思って先送りにしてしまうこと、よくあります。しかし、本当に時間がないときこそ、意外と集中力は高まります。 5分しかなければ5分でやる。書き始める、道具を出す、構想をメモする。小さなスタートでいいのです。それで実際にスタートしてみると、具体的に時間が欲しくなってくるものです。
時間があるからやる、というより、絶対守るべき部分は5分10分の取り掛かりだけでOK。気分が乗らなければそれでもOK。おそらく、勝手に気分が乗ってくるはずです。
その時に、一時間くらいは時間をさけそうだから延長するかな、という感じで大丈夫です。実際に取り掛かるときは、「3時間やろう。」ではなく、「5分やろう。」と思いながら物事に取り掛かります。 休みの日は3時間を予定としてなんとなく意識しておくものの、感覚としては、「あれ、たまたま時間が空いているな。」という感覚に持っていくことが精神的ハードルを下げつつできる方法の一つです。
特に、仕事が忙しい時期、子育ての時期、介護の時期、体調不良、人付き合い、安定して時間を確保できない要因はあらゆる方面にあるはずです。そもそも前提条件として自由な時間はほとんど確保できないかもしれません。
それでも、時間が足りないとしても、先に進められたという達成感が残ります。その「よかった」が、一日の流れを前向きに変えてくれます。時間が余れば、さらにやりたいことに時間を投下することが可能です。
ただ、時間を投下すること、結果につなげること、を意識しすぎないようにして、自分に与えるハードルを下げておくことが精神衛生上よいことかと思います。

悩んだ日こそ、練習日
休みの日、やるべきことがあるのに気が進まない。考え事ばかりして、一日が終わってしまう。そんな日もあるでしょう。しかしながら、考えた時間は無駄ではありません。
悩みやモヤモヤをぐるぐると考えた結果、何かしらの「アウトプット」に繋がっていくなら、それは成果です。
今すぐ目に見えるアウトプットではないにしろ、心の中の整理整頓。それは場数であり、経験値です。心の動きに慣れる練習。感情の揺れを受け止める力のトレーニングです。
物事の受け止め方は、もともとの感受性というものがあり、一見「無駄」と思われるような思考が発生しやすい人、しにくい人がいると思います。
ただ、比較しても仕方がない部分はあるので、自分の感情が揺れ動きやすい人なら、より多くの「訓練」していかないといけないでしょうし、「訓練」でどうしようもない環境や他者の要因だとしたら、「工夫」していかないといけないでしょう。
この対策が不十分なうちは、少しのトラブルや理不尽に敏感になりすぎてしまいます。「他人が愚かに見える」といった視点に陥る前に、心の中の温度を一定に保つ力を養うことが大切です。
もちろん、いつまでも時間を取られてしまう状況が続くだったり、コミュニケーションなどの「アウトプット」が出なかったり、そういったときは環境が悪かったり、訓練や練習が足りない状況になります。
環境を変えるためにはどうしたらいいか、模様替えか、一日のスケジュールの順番の変更か、付き合う人間をどうするか、訓練や練習をする機会をどうやって設けるか、といったことを考えて具体的に動いていく必要があります。

「するか」「しないか」から始まる朝
一日のスタートに最も大事なのは、「する」か「しない」かを自分で決めること。「しない」と決めたことに、後悔がなければそれでいいでしょう。
しかし、多くのモヤモヤは、「したいのにできない」という中途半端な状態から生まれています。本当はやりたいのに、時間がない、気分が乗らない、腰が重い、といった動きを阻害するものがあってできない。
にもかかわらず、できなかったことに対する罪悪感は確実に積もっていき、やらなかった自分を責めることになります。とはいえ、自分を責め続けることは精神衛生上よくないので、「無」「怠惰」という方向性に精神は向かっていくことでしょう。
それなら、どうすれば「やりたい」ができるかを考えたほうが早いのです。気軽にできる部分から手をつけていく。たとえば、机を片付ける。やりたいことの資料を開いておく。少しずつ準備を進めることで、実行に向けてのハードルが下がっていきます。
本当に少しずつです。エネルギーがあって動ける環境にあるなら、むしろ動かないことは精神衛生上よくないので、やってしまったほうがよいでしょう。

淡々と、楽しさを探す練習
一日の過ごし方に劇的な変化があるわけではありません。やるべきことをやり、暮らしを回していく。その中で、どれだけ楽しさを見出せるか。
楽しいと感じる瞬間、苦しいと思う場面、腹立たしさを覚える出来事。そのすべては、自分の受け止め方次第です。楽しいことばかりに目を向けるには、意識的な訓練が必要です。 もともとそうできる性格の人もいますが、基本的には習慣として身につけていくものと思っておいたほうがよいです。「気になっている」ということは、今がその訓練のチャンスです。 やってみてください。淡々と日々を回しながら、ほんの少しだけ自分を観察してみる。そして、次の一日に活かす。
一日の最初に「選ぶ」ことから
結局のところ、朝に自分で「何をするか」を選ぶかどうか。それがその日の満足度に大きく影響します。
決めること。選ぶこと。やってみること。
それが結果的に「今日もよかった」と思える一日につながるはずです。理想を描きすぎず、できる範囲で、自分で選んでいく。やりたかったことが一つでもできたならまずはOK。
そうやって、小さな満足を積み上げていければ、自然と、自分の過ごした時間に納得できるようになっていくのではないでしょうか。