淡い期待、濃い期待、つい他人に期待してしまうという感情に向き合いコントロールする

「期待」は誰しもが持っている感情の一つ

「期待するな」と言われても、なかなか難しいです。それは、人間が本質的に他者との関係性の中で生きているからです。人は無意識のうちに、自分の行動に対して他人がどう反応するかを想定し、その結果を期待してしまいます。期待通りなら喜びにつながりますが、期待外れなら失望や怒り、悲しみに変わります。

おそらく、この記事を読んでいるあなたも「期待しないようにしたい」と考えているのではないでしょうか。期待することで生まれるストレスや失望を減らし、自分の感情をうまくコントロールしたいと願っているはずです。本稿では、期待という感情に向き合い、それをコントロールするためのヒントを探っていきます。

自分の力でどうしようもない期待があるのではないか。

期待することに関して、自分の行動次第で変えられる部分と、どうにもならない部分があります。特に、他人の行動や考えに依存する期待は難しいものという前提に立って感情コントロールのスタートに立つのが望ましいです。

他人を直接的に変えることは難しいです。

もちろん、相手に期待通りの動きをしてもらうために、しっかりと下準備して交渉に臨むこともあるとは思いますが、相手の受け取り方や状況によっては、期待通りに動いてもらえないことが多いものとしておいたほうが計画としては無難です。

では、自分ができることは何でしょうか。まずは「何を変えられて、何を変えられないのか」を見極めることが重要です。変えられないことに執着すると、余計なストレスを生むだけです。

社会の大きなうねり、定着した仕組み、天の時のような流れはなかなか個人の力では抗えません。そういった外部要因が自分の期待に合致していれば、自分の力の影響が感じられるところはあるでしょうが、そうでない場合は無力感に苛まれる可能性が高いと思います。

ここまで大きな話ではなくとも、とにかく余計なことに意識を取られずに、自分が変えられる部分に集中することが大事です。そうすれば、期待と見返りのコントロールがしやすくなります。

期待する自分を変えられる可能性があるとしたら

期待を手放すといっても、ただ諦めるのではなく、別の視点でアプローチすることもできます。「相手のために」と思う気持ちは大切ですが、それが押しつけにならないようにアプローチすることは必要な努力です。

期待をコントロールするためには、「相手にどう伝えるか」が鍵となります。単に「こうしてほしい」と伝えるのではなく、相手が自然と動きたくなるような環境を作ることが重要です。

例えば、仕事の場面では、ヒントを与えて自分からやろうとする流れを作るまでにして、「やれ」というような働きかけはしないことが肝要です。相手が「やらされている」と感じないような関係性を作ることが求められます。

とはいえ、他人に対するアプローチはある程度働きかけはするものの、根本的に頼みにしてはいけません。期待外れになってしまったときの感情コントロールにコストがかかります。できるだけ期待しないことが吉です。

どうしても期待してしまうなら、自分の行動に期待するのがよいでしょう。焦点は自分に当てます。

自信がないかもしれませんが、どちらにせよ期待に対する見返りが難しいものという仮定をしたときに、それなら自分に期待するほうが、見返りが大きいでしょうし、期待値もある程度コントロールしやすいかと思います。

巷でよく言われている、他人に「期待しない」というメソッド

「他人に期待しない」という考え方は広く知られていますが、実践するのは難しいです。特に、ビジネスの場では、チームワークや協力が求められるため、完全に期待を手放すのは現実的ではありません。

私自身、期待しないと決めても、他人が前向きに前進した瞬間や成長を感じる時がすごく嬉しく、次のアクションについ期待をしてしまう自分に気づいています。表向きの表情はクールさを保っているはずですが。

人に「期待しないこと」が簡単にできれば苦労しないなと思っています。実際のところ元々の性格が存分に影響して右往左往してしまっていることも多いです。

完全に期待はしないようにしないまでも、他人に振り回されて集中したいことに集中できない事態は避けたいと思います。では、どうすれば期待を減らせるのでしょうか。

その鍵は、「何をするか」ではなく、「どうやるか」まで掘り下げることにあります。インターネットさえあれば、手を伸ばせば情報が手に入るの時代において、「期待しない」ことの重要性は一般的な常識レベルとして広まっています。

しかし、知っているだけでは意味がありません。実践するためには、期待を抱いたときに「自分がどう行動するか」を決めることが必要です。「何をするか」は情報過多で「どうやるか」が重要。自分にあった練習や訓練が必要です。

他人に期待しないために自分をよく知る

他人に期待しないようにするためには、まず自分の内面を深く理解する必要があります。掘り下げが浅いと、考えが表面的なままで、納得感が得られずに結局期待してしまうことになります。そのため、自分の感情や思考の根本を探るために、「なぜ?」を繰り返して問い続けることが大切です。

「なぜ自分は他人に期待してしまうのか?」 「なぜ他人に委ねてしまうのか?」 「本当に期待しなければならないのか?」

こうした問いを深めることで、自分が期待に依存している理由が見えてきます。単純に「期待しない」と決めても、心のどこかで納得できていないと、行動に落とし込むのは難しくなります。気付きがあっても、それが実践しやすい形に整理されていなければ、行動へと移せないからです。

また、他人に期待してしまう背景には、自分に自信が持てないことが影響している場合があります。他人の成果が自分に与える影響が大きいと感じると、無意識のうちに他人の行動に期待してしまうものです。「自分でコントロールできる範囲を広げる」「他人の行動に左右されない自分を作る」ことが、期待を減らす第一歩となります。

さらに、期待はしばしば「逃避行動」としても現れます。自分の実力不足や心の弱さを直視せずに、「環境が悪い」「あの人が動いてくれればうまくいく」といった言い訳にすり替えてしまうことがあります。自分が本当に成長するためには、他人に期待するのではなく、自分がどう行動するかを考える視点を持つことが重要です。

期待を手放すためには、まず自分をよく知り、自分の行動に責任を持つこと。そうすることで、他人に期待せずに、自分の力で現状を変えていくことが可能になります。

期待しそうになったら

期待しそうになったときは、感情のコントロールが必要です。私はこれを「心の筋トレ」と捉え、スパーリングのように期待という攻撃を躱すイメージを持つことで対応しています。まるでシミュレーションゲームのように、期待が生まれた瞬間にその行動パターンを把握し、適切な対応を選ぶような感覚です。

期待が外れたとき、人は怒りや落胆の感情に引きずられがちですが、その前に「怒る」か「怒らない」かという選択肢を意識的に持つことが重要です。これは単なる感情の抑え込みではなく、自分の行動を主体的に決めるための方法です。

また、期待の感情そのものを無理に消そうとするのではなく、他のことに期待を移すという手法もあります。期待のエネルギーをうまく消費することで、特定の対象への過度な期待を抑えることができるのです。

たとえば、仕事での期待が膨らみすぎたときは、家族との時間、趣味や自己成長の分野に意識を向けることでバランスを取るといった工夫が有効です。

無理やり忙しくして、自分がなんとかしないといけないように持っていって他人に期待する隙間を与えない形です。

何を期待している?

そもそも、「期待する」とき、私たちは何を求めているのでしょうか。「期待」している直接的な内容よりも、その期待が叶ったとき、自分にどんな良い影響があるのかを考えることが重要です。

私が職場の人間や家族に期待していた反応が返ってきた延長で得られたであろうものは「自信がついて毎日が楽しくなり、自己実現のステップが整って好循環に入る。」です。

「安心感があるが怠惰にはつながらない環境が作れる。」「締め付けられて頑張るのではなく、自発的に個々人の強みが出て上手く回るコミュニティが生まれる。」といったことも考えていた中で出てきましたが、環境が作れてどうなのか、コミュニティが生まれてどうなのか、というところが問えていません。

自分の自己実現には「自信」がキーになっていると認識しているわけですね。

しかし、こうした期待の根本にあるのは、「実力不足を補ってほしい」「メンタルの弱さを支える材料を外から欲している」という自分の弱い姿です。「実力」や「自信」を与えられるものと考えてしまっています。

それに気づいてからは、私はメンタルトレーニングやコントロールを強く意識することになりました。ジョギングのように継続的にトレーニングしていきます。

定期的に行わないとすぐに衰えてしまうものですし、そもそもマラソンを完走できないような状態です。そのため、日々意識して鍛え続けることが必要になります。

期待は「怒り」や「悲しみ」という感情につながりやすく失望に向かいやすい

期待が裏切られると、強いネガティブな感情が生まれます。「こうしてほしいのに」「なぜわかってくれないのか」といった思いが、怒りや悲しみにつながります。そして、それが繰り返されると、失望感が積み重なってしまいます。

このような感情の連鎖を防ぐためには、期待が生まれた時点で「もし期待通りにいかなかったらどうするか?」と考えておくことが大切です。期待が叶わなかった場合の対策を持っておけば、感情の揺れ幅を小さくすることができます。

自分のことなら、気合でなんとかできる部分が存分にあるのですが、他人が絡むことになると、気合だけではどうしようもない場面も多く、他人に働きかける場合はしっかりと下準備するなどの対策を取って、期待値はできるだけ下げておかないといけません。

「期待」した直接的な声掛けは効果が薄い

相手に直接「こうしてほしい」と伝えることは、必ずしも効果的ではありません。特に、関係性ができていない状態での要求は、相手にプレッシャーを与えたり反発を生むだけになりかねません。

期待が叶いやすくなるのは、信頼関係が構築されているときです。単なる言葉だけでなく、相手にとってのメリットや環境を整えることが大切です。

もちろん声掛けも大事ですが、水面下の仕掛けや前提となる行動の蓄積が重要。日頃の関わり方や信念に基づいた行動、など「期待」を発動するに相応しい信用資産があるかを問うてみてください。

言葉では理解して受け止めてくれていたとしても、実際の行動に移るかどうかでいうと、動くための材料が揃っていなければアクションには現れてきません。声掛けなのか勲章なのか、姿勢なのか、相手が何を望んでいるのでしょうか?

例えば、職場で期待する行動を引き出したい場合は、その行動が評価される仕組みを作るといったアプローチがあくまで一例としてですが有効です。

また、期待する相手がどう言ってほしいのか、どこは受け入れてほしいのか、そういった部分をすり合わせて行きましょう。

しかし、他人をコントロールできないという前提に従って「期待」が失敗するときは、当たり前のようにあります。自然な感情の流れとしては、よくあることです。夫婦間での喧嘩は上手くいかない「期待」の応酬とも言えるでしょう。

それでもなぜ期待するのか

感情を揺さぶられてまで、なぜ何度も期待してしまうのでしょうか。

もし相手が完全なクズで期待できない人なら、簡単に見限ることができます。しかし、そうではなく、どこか「期待できる」部分が見えてしまうからこそ、何度も期待してしまうのです。

  • 以前に改善の兆しを見せたことがある。
  • こちらの働きかけに対し、全く無反応ではなく、どこかに「変わるかもしれない」と思わせるリアクションがある。
  • 一定の期待に応えてくれた過去があるため、次も期待してしまう。
  • 家族など切っても切れない関係だから。

こうした理由で、完全に期待を断ち切るのが難しくなります。

そんなときは、期待しすぎない人の意見を聞くことも有効です。期待に囚われていると、視野が狭くなりがちです。冷静に状況を判断できる人の視点を取り入れることで、期待を適切なレベルに調整することができるかもしれません。

他人に期待して行動の主軸を委ねるのは終わらせよう

自分の行動の軸や、成果につながるトリガーを他人に委ねてしまっていることはないでしょうか。他人に期待するという癖は、意識しないと簡単には抜けません。

実際のところ、他人の影響で物事が好転することは確かにあります。しかし、それはたまたま手に入れられるものであり、偶然に依存していては安定しません。

だからこそ、何としても自分自身の中に成果へとつながるトリガーを持つことが重要です。

これまで、やる気スイッチを他人に委ねてきたツケが回ってきているのかもしれません。しかし、これを機に、自分でスイッチを入れられるようにすることで、期待に振り回されずに行動できるようにしていきましょう。

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