メンタルこそ仕事の土台

どんな仕事にも共通する基礎力、それは「冷静さ」です。スキルや経験も大切ですが、感情に振り回されてしまえばそれらは発揮されません。
ことストレスが多い現代社会では、メンタルの安定がパフォーマンスを左右する場面が非常に多くなってきています。
たとえばトラブルが発生したとき。冷静さを保てる人と、慌ててしまう人とでは、その後の行動に大きな差が出ます。 平常時には見えてこない「器」が試されるのは、非常時や追い詰められたときなのです。
そのため、何よりもまず「冷静でいること」「自分の状態を認識すること」。これが、成果を安定的に出すためのスタート地点だと過去の感情の状態と結果からそう思っています。
ネガティブは悪か?感情との付き合い方を再考する

「ポジティブにいこうよ」とはよく言われますが、感情はそんなに単純なものではありません。 自然に過ごしていれば、誰しもネガティブになる瞬間はあります。むしろ、そうならない方が不自然です。
大切なのは、ネガティブな感情を悪と決めつけず、その正体と向き合い正しくコーティングすることです。 実際のところ、焦り、怒り、怠惰、不安——これらはすべて、成長や変化を促すトリガーにもなり得ます。
私自身、そういった感情があるからこそこれまでの行動や努力、創意工夫につながってきたと思えます。
たとえば「このままじゃダメだ」という不安が、学び直しや改善のきっかけになったりしますし、「悔しい」という感情が、疲れていても物事に取り組もうとする原動力になったりすることもあるでしょう。
ネガティブな感情をゼロにするのではなく、役に立つ形でコントロールする。それが、感情との上手な付き合い方です。
AIのような人格?冷静さと自己制御への憧れ

AIには感情がありません。だからこそ、淡々と状況を処理し、最適解を提示してくれます。 私たちが目指すのは、まさにこの「感情に引きずられない判断力」なのかもしれません。
もちろん人間には心があります。過去の経験、立場、状況に応じて、複雑な感情が自然に湧いてきます。 ときにそれは冷静な判断を妨げ、ときに周囲との摩擦を生む原因にもなります。
「貧すれば鈍する」という言葉があります。 お金がない、余裕がないという状態が、冷静さを奪い、判断力や対人関係にまで悪影響を及ぼすという意味です。
逆に言えば、余裕があるときほど人は寛容で、視野も広がります。 だからこそ、どんな状況でも冷静でいられる「AI的な人格」に少しでも近づくことは、人生を安定させるうえで有効なのです。
自分の感情トリガーを知る

自分の中で、どの感情が厄介なのかを知ることは、第一歩です。 私にとって意識して戦うべき敵は「怒り」と「怠惰」だと思っています。
怒りは、瞬発力がある代わりに破壊力も大きく、相手に誤解を与えやすい感情です。トレーニングの際には有効な燃料になりますが、通常のコミュニケーションにおいては空気を悪くさせます。
そして怠惰は、一見穏やかに見えて、じわじわと目標をむしばみます。今日だけ、今だけ、あとでやればいい……そういった小さな選択の積み重ねが、大きな成果を逃す原因になっていたこともあったのだと思います。
感情はなくせません。しかし、自分のパターンがわかれば、対処方法も見えてきます。
「またこのパターンに入ってるな」と気づけるだけでも、行動を修正するきっかけになるのです。
感情と行動のミスマッチ

現実はいつも逆です。 「ここで冷静さがほしい」と思う場面ほど、焦りや不安が押し寄せます。
必要なときに必要な行動が出てこないものです。
「何がなんでも成功させなければならない」と気負えば気負うほど、小さくまとまってしまい、成果が出せない。 もしくは視野が狭くなってしまって、普段通りのパフォーマンスさえ出せなくなる。 そんな経験はないでしょうか?
一方で、不安に突き動かされ、まだ準備が整っていないのに行動してしまい、結果的に自滅することもあります。 行動は良くても、感情がズレていたことで大きな損失を招いてしまう。
こうした「感情と行動のズレ」に気づけるかどうかが、リスク管理の鍵です。
非常時に強い人の思考法

戦場や災害など、極限状態では、冷静さを失うことが命取りになります。 パニックになれば、本来できたはずの行動さえ取れなくなってしまうものです。
だからこそ、非常時に強い人たちは、「今、感情に飲まれてはいけない」と、あえて“逆”を取ります。これは先天的なセンスもあるでしょうし、後天的に努力したものもあるとは思います。
- 不安なときほどゆっくり動く。
- 焦ったときほど、一度手を止めて周囲を見渡す。
- 怒りが湧いたときほど、沈黙する。
- 自分の責任範囲を狭くする。微妙なラインは無視。
- どうしようもない現実は潔く諦める。
これらは、感情の“逆張り”ともいえる行動です。 簡単なようで非常に難しいです。だからこそ、繰り返し練習する価値があります。
感情の逆張りはどうすればできるか

逆張りは技術としてトレーニングしていくことも可能なはずです。 反射的に動いてしまわないよう、あらかじめ「こうなったらこうする」とルールを決めておく必要があります。
そのための手段として有効なのが、問いかけの習慣です。
まず、自分が不快な感情にとらわれているということをしっかりと自覚するところから始めます。
「あ、私は今怒りにとらわれている」などと俯瞰的に幽体離脱しているイメージで自分を捉えます。
- これは今必要な感情か?
- この感情を持つことで事態は好転するか?
- 今の行動は、後悔しないか?
- 相手の視点に立ったら、どう見えるか?
- 家族は悲しそうな顔をしないか?
最初はうまくいきません。 私自身も、布団の中でも気にしてしまい、「忘れよう」と思っても忘れられないタイプです。 だからこそ、逆張りの技術は「忘れること」ではなく、「別の行動をとること」だと位置づけました。
不快な感情は、別の行動で脳内の情報を作業で押し出すようにするのです。
感情の「逆」の行動を持ち出すクセを

常に感情に支配されない人はいないと思います。しかし、自分の感情と付き合う姿勢を持つことはできます。
「逆」をとるという行為は、反射のパターンから自分を解放する手段でもあります。今までは怒っていた場面で、あえて沈黙してみる。焦っていた場面で、あえて後ろに下がってみる。後ろに下がっていた場面で前に出てみる。そうした逆張りを行うことで、今までのやり方での結果を変えていく一手になってくるかもしれません。
感情を否定するのではなく、感情を使いこなす。そのための方法を、一つひとつ手元に増やしていきましょう。 非常時にも自分らしい選択ができるように。冷静さを、意志の力と訓練で磨いていきたいものです。
まあ、意識して感情のコントロールをしないでいい環境を構築するのが、最もよいですけどね。