兄弟を見て思う
私には子どもが2人いますが、小さなことでよく小競り合いをしています。自身に置き換えても子供の頃、兄弟の間で頻繁に衝突が起きるのを目にした人も多いでしょう。
おもちゃの取り合いや親の注目を巡る争いなど、些細なことがきっかけで対立が生まれます。これは、親との時間を巡る競争が原因です。
兄弟という近しい存在でさえ、利害が対立する場面では摩擦が避けられないことを教えてくれます。
特に幼い子供にとって、親の愛情は無限ではなく、自分だけのものにしたいという欲求が強く表れます。この独占欲が、兄弟間の衝突を引き起こします。
誰かが注目されれば、自分が疎外されたように感じる。こうした感覚は、生まれつき備わった本能的なものと言えるかもしれません。
これは子どもだけではなく、大人でも本質的な心の動きは変わらないでしょう。
ビジネス環境でも同じようなもの
このような状況は、ビジネス環境においても見られます。例えば、同僚同士が同じプロジェクトの成功を目指す一方で、昇進や評価といった個人の利益を巡って競争する場面があります。
このように、協力が必要な場面でも、利害の対立が存在する限り、完全に仲良くするのは難しいのです。
出世競争の関係性にある者は仲良くできない
特に出世競争の真っ只中にいる者同士では、その関係性が敵対的になることがあります。昇進枠が限られている環境では、一方の成功が他方の失敗を意味することもあります。
この構造が、相手を信頼することや深い友情を築くことを妨げます。
友達関係でさえ、スポーツ、お絵かき、面白さ、あらゆることで競合関係になれば、表面上か水面下かは状況によれど、基本的には火花を散らすことになっていたはずです。
上の立場から見ると仲良くしてほしい
しかし、組織の上層部や親など上の立場から見れば、関係者同士が協力し、仲良くすることを望むものです。コミュニティの平和やチームワークの向上は、全体の利益に繋がります。
ただし、個々の利害が対立する現状では、その実現は容易ではありません。
そのため、多くの場合、人々は表面的に仲良くするという形で妥協します。笑顔で会話を交わし、建前では協力的な態度を取りますが、内心では競争意識や不信感が消えないことが多いのです。
このような関係性では、深い信頼や共感が育まれることは稀です。あくまで、マイナスを付けられないように、という程度の協力関係に留まります。
表面的な仲良さでは生まれないもの
大人たるものそういったもの、という割り切りが必要な面ももちろんあるでしょうし、仲良しこよしでは成果が出ないような場面では深い交流はさほど重要ではないこともあるでしょう。
しかし、表面的な仲の良さでは、真の協力や創造的なアイデアが生まれることは難しいです。これは、みんなで、というより、チームの中での適材適所がうまく働くかどうかという観点で、互いを支え合う関係性が築かれるためには、利害の対立を乗り越える必要があります。
それができない限り、関係は浅いものに留まり適材適所などという言葉は空虚なものになってしまいます。
では、どうすれば利害の対立を乗り越えられるのでしょうか。一つの答えは、それぞれの関係性を利害関係の枠組みから外すことです。
たとえば、評価基準を個人の成果ではなくチームの成果に移す、または家族全員が平等に愛されていると感じられるような環境を作ることです。
どうやって?
具体的な方法としては、以下のような工夫が考えられます:
- 透明性の確保: それぞれの役割や期待を明確にし、不公平感を減らす。
- 協力を促進するインセンティブ: 競争ではなく協力を評価する仕組みを導入して、見返りも明確にする。
- 心理的安全性の確保: 失敗を許容し、自由に意見を出し合える環境を整える。
- リソースの公平な配分: 家庭でも職場でも、全員が必要なリソースを適切に得られるよう配慮する。
利害関係を超えた真の協力関係を築くためには、環境や仕組みそのものを変える必要があります。それは簡単ではありませんが、真の仲の良さや信頼関係を得るためには避けて通れない道です。
とはいえ
それでも、実現には多くの課題が伴います。まず、人間は本能的に自己利益を優先する傾向があります。長い歴史を通じて競争が生存の鍵であったため、この性質は深く根付いています。
また、組織や家庭内での公平性を完全に実現することは、価値観や文化の違い、感情的な要素などが絡み合うため、非常に難しいと言えます。
さらに、利害関係を排除するための仕組みを構築するには、多大な時間とコストがかかります。すべての人が満足できる形を模索する過程で、新たな不満や対立が生じる可能性もあります。
特に、既得権益を持つ者たちが変化に抵抗する場合、その障壁はさらに大きくなります。
マネジメントとしてできること
利害関係にある人、とくに同期だったりライバル関係にある者に対しては、具体的には次のようなマネジメントが効果的かもしれません。1人ずつ話すのではなく、2人まとめて「明確に」話をする場を設けます。
そして、2人が協力してミッションを達成することで、双方が満足する見返りを提示します。金銭に重みを置いているのか、名誉に重みを置いているのか、権限に重みを置いているのか、人それぞれ比重が必ず違うはずです。(もちろん全てあればよいですが、必ずそれぞれの価値観や置かれた状況で優先度に差があるはずです。)
限られた役職を取り合うから揉めるなら増やせばよく、もし増やせない場合もそれに見合う「誇り」や「実益」につながる「明確」な勲章を与えるような方法でリソースを分配すればよいのではないでしょうか。
このような方法であれば、利害の対立をゼロにはできなくても、少なくとも表面的な仲良さ以上の関係性を築く一助になるかもしれないなと、働いているときに思いました。
ただ、そうするには組織の上位にいないと難しいとは思うので、机上の空論かもしれませんけれども。
最後に
利害関係にある者たちは本質的に仲良くできない構造にありますが、それを理解した上でインセンティブの工夫を凝らすことで、表面的な仲良さを超えた関係性を築く可能性が見えてくるかと思われます。
大切なのは、競争を強調するのではなく、共存と協力を促進する仕組みを「明確にそれぞれに具体的に伝わるように伝えて」作ることではないでしょうか。