ヒューマンスキルとは何か

職場で必要とされるスキルは大きく3つに分類されるとされています。
- コンセプチュアルスキル(概念的思考力)
- ヒューマンスキル(対人関係能力)
- テクニカルスキル(専門技術)
この中でも、ヒューマンスキルは特に「変動しやすい」性質があります。 生まれ持った気質や経験によって差が出やすく、そのうえメンタルの状態や周囲の状況や相性にも強く影響されるからです。
また、時代の変化やテクノロジーの進化によって、テクニカルスキルの前提が変わることも多いですが、 最終的に信頼関係や人間性に回帰していく仕事の中では、ヒューマンスキルの重要性がより際立つ場面が増えています。
なぜ今、メンタルコントロールが重要なのか

近年は、社会の流動化・組織の再編・リモートワークの拡大などによって、 年齢や立場による意識の切り替えがより求められる時代になりました。
- 25、30、35、40、45、50歳…… それぞれの節目で価値観の揺れが起こりやすく、自分を保つ力が問われるようになります。
ヒューマンスキルが不安定になったとき、一番影響が出るのは「人との接点」です。 集中力が下がり、目の前の仕事に没頭できず、必要のない不安や不満に支配されてしまう。
たとえば、誰かの一言で心がざわついてしまい、15分以上そのことばかり考えてしまった。 その時間、目の前のタスクにはほとんど集中できていない。 こうした微細な心の揺らぎが、パフォーマンスに直結する現実があります。
ヒューマンスキルをなるべく高く保つために

ヒューマンスキルは、年齢や経験を積めば自然と高まるわけではありません。 むしろ、立場が上がることで「フィードバックをもらえなくなる」状態に陥ると、知らぬ間に粗さが出てしまうことがあります。
- 疲れているとき
- 追い詰められているとき
- 油断しているとき
本性がにじみ出てしまうのはこうした瞬間です。
特に役職や権限を持つ立場になったり、年齢を重ねたりすると、まわりは遠慮して注意をしてくれなくなります。 すると、「気づかないまま誰かを不快にさせる言葉」を発してしまうことが増えるのです。
また、フリーランスや管理職などの立場では、行動の結果に対して明確な評価が返ってこないことも多く、 「自分は大丈夫だ」と思い込んでしまうリスクもはらんでいます。
そうならないためには、自分の感情がどこで動くのか、どこで浮足立つのかをあらかじめ知っておくこと。
たとえば「不安」という感情一つとっても、
- 危機感をもたらしてくれる健全な不安
- 行動を止めてしまう過剰な不安 があります。
今の自分が抱えている不安は、どちらなのか? その感情は、自分にどんなメリットがあるのか? 一歩引いて見るだけでも、感情に飲み込まれるリスクを下げることができます。
ヒューマンスキルが低い状態とは

たとえば「嫌な言い方をしてしまう」という場面。
その裏側には、相手への不満や、自分の処遇への苛立ちがあるかもしれません。それを前向きに 「何とかしたい」と思っていたとしても、言葉には「見下している」といった部分しか表現できない状態。
言葉尻は、相手にとっては全てとなってしまう可能性をはらんでいます。 どれだけ善意があったとしても、表現としてきつく出てしまえば、 その背景を汲んでくれることは稀ですし、悪いように相手の中で膨らまされてしまいます。
逆に、そうした「言葉尻」ばかりを指摘する人も、またブーメランのように他者の言葉に敏感すぎたり、 自分のメンタルが安定していない状態だったりします。自分に自信がない人は思いのほか多いのです。
こうした状態を避けるには、自分の感情のトリガーに気づいておくこと、 そして、それをリセットする術を日常の中で持つことです。
禅的心持ちとは何か

禅は、感情を消すのではなく、「感情を認識して、そこに巻き込まれない姿勢」を教えてくれます。
- 浮足立たないこと
- 恐れないこと
これは、緊急時やストレスのかかる場面ほど重要になります。
災害や戦場で焦れば、命に関わるように、職場でも「焦り」がミスを生むことは多いです。 禅の考え方は、それに対して「いまここ」に集中し、自分の内側から落ち着きを取り戻す技術を示してくれます。
禅的心持ちとは、冷静さを生む「型」でもあります。 この型を身につけることが、ヒューマンスキルの安定につながるのです。生きやすくするためのメソッドとなる書籍なども、巷にあると思いますので、禅を生かしたい人は探してみるとよいでしょう。
日常でどう鍛えていくか

ヒューマンスキルは、特別なセミナーや研修でしか磨けないものではありません。
- 毎朝の挨拶
- メールの文面
- 雑談のトーン
- 依頼の言い回し
こうした日常のやり取りの中で、「整える」「選ぶ」「沈黙する」を繰り返すこと。 それが、禅的心持ちのトレーニングになります。
本来の自分の性格に正直すぎると、人との摩擦は増えてしまう人もいます。 一方で、他者に合わせすぎると自分を見失って本来持っていた良さも無くしてしまうこともあります。 そのバランスをとる「2枚目の人格」を育てる意識が必要です。
高く保ちたいヒューマンスキル

最終的に、どれだけの技術や知識を持っていても、 「人と信頼関係が築けるか」が成果を分けます。
ヒューマンスキルは、マネジメントを目指す最初の段階でも、 チームで動く上でも、あらゆる場面で土台となる力です。
その土台がぐらつかないように、日々の心持ちと行動を整えていく。 メンタルコントロールと禅的な態度を持つことで、 自分のスキルや知識を最大限に発揮できる土壌が育まれるのだと思います。